
突然涙が止まらなくなった……
ストレスチェックをクリアしたのに休職
「あれ、私泣いてる。どうして?涙が止まらない」
大手出版社の編集者A子さん(当時28歳)は正月明け、出社しようとした途端、自分が泣いていることに気が付いた。同居の母親も驚き、目を丸くしている。
「私、もうダメみたい。仕事がいやでたまらない」
嗚咽が漏れ、後半は言葉にならなかった。
中学生のころから書籍編集者に憧れていたA子さんが、新卒入社で配属されたのは男性週刊誌の編集部だった。
「まずは厳しい現場で経験を積んでください。必ずあなたのためになるから」
諭されて任されたのは、ヌードグラビアと風俗の記事。「新人女性記者が突撃ルポ」的な企画の数々は会社ぐるみのセクハラに感じられ、「こんな仕事は糞だ」と清楚な顔立ちを歪ませ、A子さんは周囲にたびたび訴えるようになった。
ただ、会社で実施される「ストレスチェック」での評価は常に「低ストレス」だった。
「どういう質問で『はい』を選んだら高ストレス判定になるか、想像できてしまいますよね。私は男性誌の編集が嫌なだけで、編集という仕事自体は大好きです。忙しさも睡眠不足も苦になりません。それなのに、メンタル不調が原因で、編集以外の現場に回されたら困ります。だから質問に正直に答えることはできませんでした」
異動願いは何年間も却下され続けている。後輩も増え、「セクハラ案件」以外の企画も多々任されるようになり、忙しさや責任は増すばかりだったが、比例して「男性誌の編集」に対する嫌悪感も募っていった。そしてついにメンタルが崩壊した。
母親に伴われ、心療内科を受診すると「適応障害」と診断され、会社を休業するよう指示された。約3カ月後、休業明けを前に、書籍編集部への異動が決まった。念願が叶い、A子さんは晴れ晴れとした顔で語った。
「同じ社内でも、扱う媒体が変わると、編集部の雰囲気はこうも変わるんですね。天国です」