現代の経営においては、これら3つの要素をより広い視点で捉え直す必要があります。「モノ」に加えて「人」にも積極的に投資し、その結果得られた「金」を再び「人」と「モノ」に還元する循環を意識しなければなりません。このサイクルを確立することで、企業は持続的な成長と価値創造を実現することが可能になります。
また、バリューチェーンの再評価も重要です。マイケル・ポーター理論の企業活動における「主活動」と「支援活動」で、従来は支援活動が「コスト」として扱われ、軽視される傾向がありました。しかし、現代では支援活動である人的資源管理や技術開発も、主活動と同等以上に価値創造に寄与するものとして再評価しなければなりません。これらの活動にしっかりと投資し、組織全体で価値を高める仕組みを構築することが求められます。
人的資本への投資は
事業の成否を左右する
現代の企業が行う価値創造は、広い意味での「プロダクトづくり」と言い換えることができます。そして、このプロダクトづくりを成功させるためのプロダクトマネジメントは、最終的に「人材」に依存しています。
プロダクトを成功させるためには、顧客のニーズを的確に把握し、それを形にする技術力、そして組織全体でそれを実現する実行力が求められます。これらの能力はすべて人的資本によって支えられています。例えば、エンジニアが技術的な課題を解決し、マーケティング担当者が市場の動向を分析して戦略を立てることで、革新的なプロダクトが生まれます。
人的資本への投資は単なるコストではなく、プロダクト事業の成否を左右する決定的な要素です。技術的なスキルだけでなく、創造性や問題解決能力、チームでの協力体制など、人的資本が持つ多面的な価値を最大限に活用することが、プロダクト成功の鍵となります。
次回は、企業のイノベーションの糸口ともなる、新規プロダクトの成功について考えます。特に大企業で新規プロダクトを成功させるにあたって、どのような課題があり、どのような戦略を取るべきか、考察していきます。
(クライス&カンパニー顧問/Tably代表 及川卓也、構成/ムコハタワカコ)