例えば、AIやデータ活用といった先端技術を扱える人材の育成は、競争力を高める上で重要な要素です。ある大手金融機関では、AIを活用したリスク管理システムの開発を進めるため、専門人材向けのトレーニングプログラムを導入しました。また別のソフトウェア開発の現場では、新しい技術を習得するためにチーム全体で学び合いの場を設けることや、外部の専門家を招いて実践的なスキルを磨く機会を提供するケースもあります。

 継続的な学びの場を提供することは、従業員1人ひとりの効率や業務の精度を上げるだけでなく、チーム全体としての技術力や問題解決能力も強化します。

 組織の柔軟性を高めるためには、クロスファンクショナルなチーム編成も重要です。製造業では、エンジニアとマーケティングチームが連携し、顧客ニーズに応じた製品開発を迅速に行う体制を整える現場もあります。

 さらに、パーソナライズされたサービスによる顧客満足度の向上も、人的資本が生み出す価値の1つです。ECサイト運営企業では、顧客の購買履歴や閲覧データを活用して個別に最適化された商品提案を行い、リピート購入率を向上させた事例もあります。

 人的資本の価値を最大限に活用することは、DX時代における企業競争力の鍵となるのです。

「モノ」重視から「ヒト」重視へ
プロダクト成功のためには価値観を変えよ

 従来の企業経営では、「人・モノ・金」が重要な要素と考えられてきました。これらは経営資源とも呼ばれ、企業の成長と価値創造の基盤を形成してきました。しかしこれまでは、3要素のうちでも「モノ」への投資が重視され、「人」への投資は軽視される傾向が大きかったのです。