人的資源管理も単なる「コスト管理」ではなく、「人材開発」へと進化。従業員のスキル向上やエンゲージメント向上を図ることで、組織全体のパフォーマンスを高める取り組みが重視されるようになりました。バリューチェーンにおける支援活動の役割は、DX時代において大きく拡大し、企業の競争力を支える重要な要素となっています。
限界費用が限りなくゼロになる世界で
人的資本の活用がもたらす意味
前述したように、デジタル製品やサービスは、限界費用がほぼゼロに近いという特徴を持ちます。SaaSモデルを例に考えると、ソフトウェア開発やインフラ整備などの初期投資は大きいものの、完成したサービスを新しい顧客に提供するためのコストはほぼゼロです。
このような状況下では、人的資本が収益性に直接影響を与える重要な要素となります。ソフトウェアを開発するエンジニアや顧客課題を解決するコンサルタントが、デジタル製品の価値を高め、多くの顧客を引きつける役割を果たします。人的スキルや知識は複製可能な価値を生み出し、企業がスケールする原動力となります。
また、クラウドコンピューティングの普及により、物理的なインフラへの依存度が低下し、人的資本を活用して効率的に価値を提供することが可能になっています。例えば需要に応じてシステムのリソースを自動的に増減させるオートスケール機能などの仕組みにより、企業は結果として少ないリソースで多くの顧客に対応できる体制を構築し、競争力を維持することができるのです。
DX時代において、人的資本は企業の成長戦略の中核を担っています。デジタル製品・サービスの限界費用がほぼゼロである特性を活かし、人的資本を最大限に引き出すことで、効率的かつ持続的な成長が可能です。