東京都は晩婚化・未婚化の傾向が強い
一方、結婚出生力の水準は?

 地域別にみれば、TFRは人口移動の影響を受けやすいことに加え、地域人口の男女比の影響も受けやすい(女性人口の方が多ければ未婚女性が多くなりがちとなり、TFRは低くなりやすい)、人口規模の小さい地域では値が不安定になりやすいなどの留意点はあるものの、少なくとも大まかな地域別出生力の把握や出生力の地域間比較を行うには適した指標と言える。

 ある年の年齢別人口と年齢別出生数だけですぐに算出可能であり、速報性が高いというメリットもある。東京都の出生率はTFRでみてもCTFR(編集部注/TFRのように特定の期間ではなく、特定のコーホートにおける再生産年齢中の年齢別出生率を足し上げたコーホート合計出生率。各世代が再生産年齢を通して平均的に何人の子どもを産んだかを把握することが可能)でみても全国値より大幅に低く、出生力が低い地域であることは明白と言える。

 東京都で晩婚化・未婚化の傾向が強いことは、「国勢調査」から得られる配偶関係別人口等からも容易に把握可能であるが、結婚した夫婦からの出生力(結婚出生力)の水準については、もう少し詳しい検証が必要となる。

 結婚出生力を測定する指標として真っ先に考えられるのは、ある年の出生数を分子、同年の有配偶(結婚している、または婚姻状態にある)女性人口を分母とした有配偶出生率である。

 これは一見すると適切にも思えるが、結婚持続期間の違いが考慮されないなどの問題を含んでおり、この指標から結婚出生力を的確に測定することは不可能である。問題点については、きわめて単純化すれば下記のとおりである。

生まれる子どもの数は同じでも
異なる出生率になるケース

 いま、地域Aと地域Bという2つの地域があり、それぞれ毎年15人の女性が出生して40歳まで域外との人口移動がなく死亡も発生しないという状況を想定する。

 地域Aでは毎年10人が20歳で結婚して22歳と24歳で子どもを産み40歳まで有配偶で過ごし、地域Bでは毎年10人が30歳で結婚して32歳と34歳で子どもを産み40歳まで有配偶で過ごすと仮定すると、各年齢での人口(有配偶)、人口(有配偶以外)、出生数は表5-4のとおりとなる。