これは、親世代に相当する若年人口が全国から東京都に集中するためであり、地域別出生数の変化に対しては、人口移動の影響が出生率の地域差の影響を凌駕することに留意する必要がある。換言すれば、東京圏一極集中によって東京都の低出生率の問題が覆い隠されてきたとも言えるであろう。

人口戦略会議 著
しかしながら、社人研「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」によれば、東京都においても転入超過による社会増が低出生率に起因する自然減に抗しきれなくなり、2040年以降は人口減少に転じる見込みとなっている。国内経済を牽引する東京都の出生率の動向は、東京都ひいては日本の将来を見通すうえできわめて重要である。
このたび東京都のTFRが1を割り込んだことにより、ある意味では、東京都の低出生率について掘り下げて分析するための好機が提供されたと言えるかもしれない。本稿ではその第一歩として、時系列でみた出生率の傾向について基本的な指標により概観した。
今後、的確な統計に基づく客観的な分析による、東京都の出生率回復に向けた新たな知見の導出が期待される。