米カリフォルニア州バーバンクに住むファッションデザイナーのノントラ・ヤンタプラサートさん(41)は、短くて発音しやすい夫の姓を名乗るのが待ちきれなかった。この時は、それがいったいどのようなトラブルを引き起こすのか知る由もなかった。彼の名字はNull(ナル)で、コンピューター科学者が 「無価値」や「無効」という意味で使う単語と同じだ。世界中のNullという姓を持つ人々は、ウェブサイトで入力が無効とされたり、処理中のエラーが発生したり、顧客サポート担当者に「アカウントは存在しない」と告げられたり、人生を通してさまざまなトラブルと付き合ってきたことが明らかになっている。ノントラさんはNull姓になった後の2014年、友人の結婚式のため払い戻し不可の航空券でインドに行く予定だったが、ビザが郵送されてこなかった。インド領事館は彼女に対し、何度も試みたがコンピューターシステムが彼女の姓を処理できなかったと説明した。結婚式の1週間前になっても、ノントラさんはまだ待ち続けていた。