具体的には、新しいもの(営業DXも含まれる)は、その革新性を面白がってわれ先へと味方になってくれるイノベーター、その価値を早期に見つけ出して取り入れるアーリーアダプター、このあとにキャズムが待ち構え、続いて少し遅れて取り入れるアーリーマジョリティとレイトマジョリティ、そして新しさや社会の動きへの関心がないラガードの5分類の順に浸透していきます。
キャズム理論では、市場のイノベーターの割合を「2.5%」、アーリーアダプターを「13.5%」とし、これを合計した16%を超えて普及した場合に「キャズムを飛び越えた」と判断します。
誰と一緒にスタートし
どの部門での理解を獲得するか
組織の変革では、お仕着せの改革に気後れしながら取り組んでいるだけではキャズムを超えることができません。社内の反発や抵抗があることを前提として、それでもやり遂げる意思と目標を持てるか、「Fail Fast,Fail Often」の精神で失敗を次の糧にする姿勢でぶつかれるかどうかが重要なのです。
キャズム理論を紹介しましたが、私たちの感覚知では16%までいかなくとも、10%が価値や効果を理解すれば、大きな石が動き出します。
その取っ掛かりとなるのが小さなプロジェクトで、徐々に味方を増やし、その割合が半数を超えるくらいになると、懐疑派が少数となって逆転現象が起こります。当初の、会社方針だから仕方なく「付き合ってやってもいい」という消極的な考えを持つヒトも、「取り入れないわけにいかない」「デジタルセールスと付き合った方が良い」と手のひらを返したように推進派へと変わります。

友廣啓爾 著
このことから、営業DXの推進は、まず興味や関心のあるイノベーター的なフィールドセールスとともにPoC(Proof of Concept:実験的な検証)から取り組むのがお勧めです。そのような部門が増えることで、フィールドセールス全体のアーリーアダプターに影響を与え、10%のキャズムを超えることができます。ここを超えれば、アーリーマジョリティでも営業DXに取り組むことが当たり前になり、全体でより好意的に受容されていきます。
言い換えると、営業DXの立ち上げは、誰と一緒にスタートし、どの部門での理解を獲得するかを精査する必要があるということです。スタート時点で否定的なレイトマジョリティの後半やラガードの部門と組んでも、重い石はびくともしません。この選択が肝要です。つまり営業DXを推進していくうえで、どこと協業するかを考えると同時に、付き合わなくても良い、後回しで良い部門も見極める必要があります。