さらに大きな課題は、物理的に時間が割けないことです。先発完投型の営業が定着し、見積りの作成から納品後の対応まで幅広い顧客対応をしているため、新規顧客の開拓が重要だと認識していたとしても、工数をあてられないことがほとんどです。過去の経験より、「マーケティングから受け取る案件はゴミばかり」とそもそも体感済みにもかかわらず、すでに知る自分の担当顧客をさも新規案件のように渡され、フォローするよう追い立てられているようなことなど加算されれば、ますます他部署との連携に否定的になります。
重い石を動かすためには
初動に最も大きな力が必要
前例主義で「どうせうまくいかないだろう」と思う悲観論者もいますし、社内のパワーバランスとして営業が絶対的に強い企業は、まずフィールドセールスに提言することすら難しいケースもあります。
フィールドセールスの業務は一朝一夕で変わるものではありません。逆に言えば、時間をかけてでも先に挙げた課題さえ解決できれば、その先の取り組みがラクになります。例えば、The Model型(編集部注/営業組織の分業体制を構築するフレームワーク。セールスフォース社が提唱しており、BtoBビジネスで多く採用されている)の営業体制に移行して、案件創出に関わる業務はインサイドセールスに、アフターフォローに関する業務はカスタマーサクセスに振り分けが実現できれば、フィールドセールスの負担が軽くなり、良質な案件を存分に食べられるようになるかもしれません。
重い石を動かすためには、初動に最も大きな力が必要です。JTC(編集部注/ジャパニーズ・トラディショナル・カンパニー)と揶揄される日本企業は、良くも悪くも「失われた30年」の間に従来型の営業スキルを追求し、その成果として、着々と売上を伸ばしてきた経緯(今はその方法では成果につながらない)があります。