DXプロジェクトが頓挫する企業のほとんどでは、これら目的のどちらか、または両方を達成できておらず、表面的な取り組みで終わっています。

 例えば、営業部門の力が強い企業では、他部門が意見できずに非効率な業務が放置されることがあります。その遠慮と、営業に物申すことをタブー視する社風により変革の一歩が踏み出せないのです。

 DXプロジェクトで外部コンサルタントを活用するのも「社内の人間が言えない」実態の表れです。外のヒトは良い意味で無責任な提案ができ、それが既存の業務をディスラプトするきっかけになっているのです。しかし、本気で変革を実現したいのであれば、内部のメンバーが1人目の提案者となる必要があります。

営業DX実現を阻む最大の壁は
「フィールドセールスとの協業」

 富士通の場合は私たちがその役目を担いましたが、他の企業でも同様に、営業と経営に向けて変革の必要性を主張するリーダーが求められます。

 富士通の改革では、フィールドセールスの理解獲得から手をつけました。そのための道筋は、フィールドセールスが狙いたい企業や業界をデジタルセールスが提案し、アプローチのためのプロセスを構築することです。受注が増えれば、DXやデジタルセールスに対する期待が膨らみ、「バディ」の関係性が構築しやすくなります。

 ただし、「言うは易く行うは難し」です。もしご用聞き営業や既存顧客からの紹介で一定の売上を確保できている場合、データ活用やインサイドセールスとの協業によって新たな案件を増やす必要性を感じず、今の営業スタイルのままで問題ないと考えるでしょう。分業化に慣れていないと「日本企業にはそもそも馴染まない」「単一商品を扱う外資やスタートアップ企業だから通用する」といった先入観があり、「オレ客」「ワタシ客」の情報を共有する抵抗感があるため、「築き上げてきた顧客の印象や信頼を壊す気か」「クレームになったら誰が責任を取るのか」と考えます。