でも、薬学の進歩とともに、依存性がほとんどないと考えられる新しいタイプの睡眠薬が出ています。例えば、オレキシン受容体拮抗薬というタイプの薬があります。これは、脳の覚醒を促すオレキシンという神経伝達物質の受容体を邪魔することで脳を睡眠へと誘います。
オレキシンという神経伝達物質は、専用の受容体にくっつくことで脳の覚醒を促します。その受容体が邪魔されることで、脳を覚醒しようという作用が弱まるので、眠りやすくなるのです。
ひと昔前のベンゾ系、非ベンゾ系の睡眠薬は脳のシグナルをバサッと切って強制的に睡眠にもっていくイメージでしたが、今のオレキシン受容体拮抗薬のような睡眠薬は睡眠と覚醒のバランスを整えて、自然な眠りに導くイメージです。
私が医学のトレーニングを受けた頃には、すでにこうした睡眠薬がファーストチョイスになっていました。私よりも上の世代の先生方でも、ほとんどの先生はちゃんと最新の医学を勉強されているので、依存性の少ない睡眠薬を処方されていると思います。
仕事を休めないなら
薬を頼りにすべき
実は私自身も、この睡眠薬をときどき半錠飲んでいます。経験上、飲んだほうが寝つきも寝起きもいいのです。特に、仕事が忙しくて考えなければいけないことがたくさんあるような時期には、あれこれ考えて眠れなくなるよりも、1錠なり半錠なり飲んで、しっかり睡眠をとって、翌朝スッキリした頭で仕事をしたほうがずっとはかどります。ですから、量を調節しながら、上手に睡眠薬を使っています。
睡眠薬に限らず、どんな薬にも効果と同時に副作用があります。薬は肝臓や腎臓で代謝されるので、飲み続けることで肝臓や腎臓に負担をかけてしまうリスクは確かにあります。でも、それは、血圧やコレステロールの薬など、すべての薬にいえること。
血圧やコレステロール値が高い人がなぜ薬を飲むのかといえば、リスクよりもメリットが大きいからですよね。睡眠薬も同じです。