眠れていなくて、そのために生活や体調に支障が出ているから、私たち医師は「睡眠薬を使いましょう」と提案するわけです。リスクとメリットを天秤にかけた結果です。

 それでも「薬は嫌です」とおっしゃる方には無理強いはしません。ただ、その一方で、絶対に睡眠薬を使ったほうがいい場面もあります。

 例えば、仕事に疲れ切ってメンタル不調に陥っているけれど、本人はどうしても仕事を休みたくないと言う。しかも、職場に相談しても、すぐには環境が落ち着きそうにもない。環境は変わらないし、休むという選択肢もないのなら、速やかに自分を整えるしかありません。それなのに、「薬は使いたくありません」と言われると困ってしまうのです。

 自分を整えるという点でまず大事なのは、生活リズムを整えること。夜眠れなければ生活リズムはどんどん乱れていきます。でも、不眠というのは、睡眠薬を上手に使えばすぐに解決しやすいものです。そして、解決して眠れるようになれば、睡眠薬から卒業すればいいだけのこと。

 ですから、眠れなくて困っているのであれば、そんなに構えることなく、積極的に使うべきだと私は思っています。

休日を寝て過ごせば
生活リズムが乱れる

 最近、「社会的時差ボケ(ソーシャル・ジェットラグ)」という言葉が注目されています。平日は仕事に追われて十分な睡眠時間が取れず、その分、休日に寝だめする。そうした生活が体内時計をずらし、朝起きられなくなったり、昼間眠くなったり、夜眠れなくなったりすることを社会的時差ボケといいます。

 休むことには、体力的な休養とメンタル的な休養があります。

 疲れているときにやってしまいがちなのは、一日中、横になって寝て過ごすという休み方。平日に疲れた体が癒され、体力は回復します。