久保氏は、55人のIT企業労働者を対象に1カ月間、ウェアラブルデバイスやスマホの疲労アプリを用いて日々の勤務間インターバルの長さと睡眠時間、心理的疲労指標との関連について調査を行った。
その結果、平日の勤務間インターバルが1時間増えるごとに睡眠時間が約15分増加し、仕事の疲れ具合、仕事からの心理的離脱も有意に改善、というふうに一定の効果が見られた。ただし「11時間のインターバルを確保すればいい、と手放しで言えるわけではありません」と久保氏は警告する。
「11時間のインターバルを取った生活をシミュレーションすると、確保できる睡眠時間は5~6時間、1日あたり4時間の残業は許容され、月間に換算すると残業80時間。つまり、過労死ラインといわれる水準でした。つまり、インターバルを導入すれば全て解決ではない。その運用方法は各職場での工夫が必要だが、インターバルの意味合いとしては、労働者の健康や安全を守るための最低ライン、最後の砦ととらえるべきです」
職場への働きかけはどうする?
改善は皆で協力して少しずつ
職場にも「変えて欲しいこと」について働きかけをしてみたい。
「職場ごとに業務内容や変えるべきことは異なります。働いている当事者同士でオフの質を下げるような勤務時間外のメールはできる限りやめるよう話し合いをする、職場の安全衛生委員会や労働組合、産業保健スタッフ、人事労務などが中心になって働き方改善のために匿名アンケート調査を行って話し合う、といった活動も効果があるでしょう」
例えば「なんとなく常態化しているこの職場ルール、変えたらもっとそれぞれが集中できる時間が増えるのでは?」といったテーマで知恵を出し合ってみるのもいい。気づかなかった改善点を掘り起こすことで、少しずつに職場の空気を変えていけるはずだ。
「ゼロはいつまで経ってもゼロ。失敗してもいいから1つでも改善のための行動をしていくと、結果的に0が1になり、1がやがて10、100になっていくと信じたいですね」
本連載では、「休み方」についてさまざまな角度から検証していく。疲労を軽くするだけでなく、結果的に仕事の充実感が高まり、毎日がもっと楽しくなることをゴールとしたい。第2回は、膨大な情報処理やマルチタスクによって現代人に起こっている「脳疲労」、第3回は、食事によって日中に眠気をもよおす「糖質疲労」、第4回は、休養の取り方の発想を変える「攻めの休養」について、それぞれ専門家に話を聞く。
>>第2回『「今日も朝からだる重…」脳の“休め”