石井正則医師は、毎日の耳そうじが「悶絶するほどの激痛」を引き起こす可能性があると警鐘を鳴らしています。また、WHOも問題視する「気づかぬうちに両耳が聞こえづらくなる」NG習慣とは?ジャーナリストの笹井恵里子さんが聞きました。(JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長 石井正則、構成/ジャーナリスト 笹井恵里子)
日本人は耳そうじが大好きだが
耳あかには抗菌作用がある
日本人は耳そうじが大好きです。
しかし耳にとって本当に良いこととは、耳そうじを自分でしないこと。綿棒や耳かきでこれだけ頻繁に耳そうじをするのは、日本人くらいでしょう。
米国耳鼻咽喉科頭頸部外科学会など海外の学会や報告では、健康な状態であればほとんどの方は耳そうじが不要とされています。
また欧米や中東の有名ホテルでは、ホテルのアメニティーグッズの中に綿棒が用意されていることがありますが、それが入っている袋に「Do not insert cotton swabs into your ear canal」つまり「綿棒を耳の中に入れるな」と書いてあります。それでは何のために綿棒があるのか。一般的にはお化粧や、部屋にある機器のメンテナンスに使用するために備えてあるのですね。
日本で耳そうじに関するトラブルはしばしば起こっています。多いのは、耳の中をこすり過ぎて外耳炎になって痛くなるというもの。ほかにも耳かきで耳の中に傷を付け出血したり、感染症を起こしたり……。
本来、耳あかは表皮にのって自然に外に出てきます。さらに食事やあくびなどであごを動かすことでも、押し出されます。それなのに耳そうじをすることで、外へ出ようとしている耳あかを奥へ押し込んでしまうことが少なくありません。
また、ご存じない方が多いのですが、耳あかにもきちんとした働きがあるのです。まず外から入ってきたゴミの吸着。次に、外耳道を湿潤に保ち、皮膚を守る働き。そして耳あかには抗菌作用があるため、耳の中で細菌の繁殖を抑える働きがあります。