シゲルさんが銘柄を選定する基準は、原則として「増収・増益・増配」になっていること。もちろんどれだけ優秀な銘柄でも、株価が上がりすぎていれば高値でつかんでしまう可能性もある。そこで株価の値動きの推移をグラフ化したチャートを分析し、“買いどき”を見極める。

 業績は良いのに割安のまま放置されているような会社は、「後から必ず株価がついてくる」とシゲルさんは話す。だからこそ、企業の努力に関係ない地合いの影響で株価が下がったような場合は、「保有」もしくは「買い増し」すべきだというのがシゲルさんの考えだ。

「株とは家族にならなあかん」
自分の得意な銘柄で勝負せよ

 約3900の上場銘柄のうち、約1200もの銘柄を監視対象に入れているシゲルさんだが、とりわけ得意な業界が自動車業界だ。それもトヨタやホンダといった販売メーカーではなく、ジーテクト、東海理化、武蔵精密工業、愛三工業、ユタカ技研といった自動車部品メーカーを主戦場とする。

 輸出産業でもある自動車業界では、円高は逆風となる。自民党総裁選において、日銀の追加利上げに否定的だった高市早苗氏が落選したことで円高が進んだ際には、自動車関連株を主軸とする「輸送用機器」カテゴリーが株価の下落率トップとなった。

 それでも、売買する銘柄をシゲルさんが変えることはない。その理由として、まず各企業が定めた為替のレートを挙げる。「いまは大体1ドル=145円程度で想定している企業が多い。145円を下回った時期もあるけど、通期で見たらそこまで長くはない。ということは、まだ上方修正が出る余地があるということや」。

 その前提には、「今後もその企業が伸びていくはずだ」との信頼がある。人口減少が続く日本において、日本企業が今後も成長を続けるためには輸出に活路を見いだすしかないとシゲルさんは考える。長期的な目線と短期的な目線、そのどちらもが投資には必要だ。

 さらにシゲルさんは、株式投資の前提として「株とは家族にならなあかん」と話す。「一度会っただけではただの友達。毎日会うことでようやく家族になれるんや。家族にしか分からんこともあるやろ」。さまざまな銘柄に目を通しつつも、局面ごとにガラッと銘柄を入れ替えるのではなく、自分の得意な銘柄で勝負する。シゲルさんにとって、それが株式市場で生き残ってきた秘訣(ひけつ)だ。