大企業が賃金を収奪! 「階級社会」の不幸#11Photo by Hiroyuki Oya

就職氷河期世代はどんな苦境に置かれているのか。特集『大企業が賃金を収奪!「階級社会」の不幸』の#11では、豊富なデータで氷河期世代の実像に迫った著書『就職氷河期世代』(中公新書)が話題の東京大学の近藤絢子教授に、課題と処方箋を聞いた。(聞き手・ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)

氷河期世代は前期と後期でも格差がある
下の世代も雇用や収入は回復していない

――就職氷河期世代をテーマにした著書が話題です。どのような問題意識があったのでしょうか。

 執筆を始めた2019年当時も氷河期世代が話題でしたが、報道のされ方に違和感を持ちました。フォーカスされるのは氷河期前期世代(1993~98年卒)が中心で、後期世代(99~04年卒)もひとくくりにされていたのです。また、ポスト氷河期世代(05~09年卒)やリーマン震災世代(10~13年卒)は大丈夫そうだという風潮が気になりました。

 実際にデータを見ると、氷河期世代でも前期と後期ではかなり差がありました。後期世代の方が雇用は不安定で年収も低いのです。そして、氷河期より下の世代も雇用や収入が回復しておらず、氷河期前期世代よりもむしろ厳しい環境に置かれていました。この点は、著書で訴えたかったポイントの一つです。

――氷河期世代以降は、同じ世代の中でも所得格差が拡大傾向で、高所得層の収入増ではなく、低所得層の収入がさらに下がることで格差が広がっていると著書で指摘しています。この原因は何でしょうか。

 まず、非正規雇用の人々が増えています。年齢を追うにつれて非正規から正規雇用に移ってはいるものの、他の世代と比べ、同じ年齢時の非正規雇用の比率は高まっています。

 また、フルタイムで働く正規雇用であっても、賃金水準が下がっています。氷河期世代は、給料の高い大企業に正社員で入れなかった人の割合が高かったことも要因でしょう。