大企業が賃金を収奪! 「階級社会」の不幸#9Photo:takasuu/gettyimages

高年収で“勝ち組”の総合商社の社員たちの給料が爆増中だ。社員の関心事は賃上げよりも業績に連動するボーナスの行方である。特集『大企業が賃金を収奪!「階級社会」の不幸』の#9では、シニアも含めたエリート商社社員たちの高待遇ぶりの実態に迫る。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)

窓際族でも年収3000万円を突破!?
超円安が商社の業績と年収を大幅増

「三菱商事ではついに『ウィンドウズ3000』まで登場したそうですよ」

 大手総合商社のある中堅社員はやっかみ交じりにそう苦笑いする。

 高年収で知られる総合商社の中でも、財閥系で年功序列色の強い三菱商事は、さほど仕事をしない中高年の社員であっても高待遇が保証されている。

 窓際族でも年収2000万円。そんな社員をやゆする「ウィンドウズ2000」という隠語は、業界に広く浸透。在宅勤務の場合は「ウィンドウズ2000 ホームエディション」と呼ぶなど言葉遊びの格好のネタだった。

 そんな商社のウィンドウズに、最新バージョンが誕生した。いよいよ窓際族でも年収3000万円がもらえてしまう“恵まれた”時代に突入したというのだ。

 可能にしたのは、歴史的な超円安が後押しする好決算である。

 大手総合商社の2024年3月期決算は、資源価格の下落もあって三菱商事の純利益は前年から18.4%減の9640億円と1兆円を割った。三井物産は減益幅を同5.9%にとどめ、1兆0636億円の純利益をたたき出して24年ぶりに業界首位に立った。

 足元の25年3月期見通しでは、三菱商事の純利益は同1.5%減の9500億円で、同13.5%減で9200億円の三井物産からの首位奪還が見込まれている。また伊藤忠商事は同9.8%増の8800億円と増益を継続し、ライバルたちとの差を縮める予想だ。

 減益とはいえ、総合商社の純利益額は日本の大手企業でもトップクラスだ。製造業などと比べ、社員数も一回り小さい。この稼ぐ力の強さが、高年収を支えている。

 総合商社の社員たちは、社内の春闘の賃上げ動向をほとんど気にしない。業績連動で支払われる賞与のインパクトの方がはるかに大きいためだ。そして、減益してもなお、巨額の純利益を稼ぎ出す環境は、商社の社員たちの懐をひときわ温かくしている。

 次ページでは、給料が爆増中の総合商社で、シニア社員も含めた賃上げ動向や高待遇ぶりをお届けする。