大企業が賃金を収奪! 「階級社会」の不幸#5Photo:Michael H/gettyimages

日本銀行の利上げが、メガバンクに“爆益”をもたらしている。2年連続の高賃上げが確実視されていることに加え、シニア行員を苦しめていた「役職定年」がメガバンクから消えそうだ。特集『大企業が賃金を収奪!「階級社会」の不幸』の#5では、業績が劇的に改善中のメガバンクの賃上げと人事制度改正の行方を深掘りする。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)

「金利ある世界」到来が賃上げ後押し
3メガバンクGそろって最高益

「金利ある世界」の到来が、銀行業界の賃上げを強く後押ししている。

 日本銀行は2024年3月、約8年ぶりにマイナス金利を解除。その後も同7月と25年1月に相次いで政策金利を引き上げた。

 現在の政策金利は0.5%程度だが、市場では日銀が0.25%幅の追加利上げをあと2回行い、1%に到達するとの見方が主流だ。ただし、足元のインフレや春闘の高賃上げ予想から、利上げの“ゴール”は1%では止まらないとする説も支持を集め始めている。

 金利上昇は資金を調達する企業や住宅ローンを借りている個人には負担増になるものの、預貯金の利息も増えるため、多くの預貯金を抱える家計にはプラスになる。そしてもちろん、銀行の収益も大きく改善する。

 銀行の本業は、預金などで集めた資金を貸し出し、利鞘を稼ぐビジネスだ。歴史的な超低金利が長らく続き、稼げない状況に置かれていた銀行業界にとって、金利ある世界の到来は恵みの雨だ。

 実際、3メガバンクグループの収益は大きく改善している。2月に出そろった25年3月期の第3四半期決算。三菱UFJフィナンシャル・グループの純利益は1兆7489億円、三井住友フィナンシャルグループは同1兆1360億円、みずほフィナンシャルグループは同8554億円といずれも前年同期から3割以上増加して、過去最高益を達成した。

 金利上昇の効果は絶大だ。

 次ページでは、日銀利上げで好調な業績が可能にするメガバンクの賃上げ動向に加え、役職定年の行方など人事制度の改正やシニア層の待遇を深掘りする。