そもそも国民民主党が言う「年収103万円の壁」とは、給与所得者の所得税の課税最低ラインのこと。給与収入には給与所得控除という一定の非課税の枠があり、最低額は55万円だ。基礎控除は48万円なので、給与所得者は2つの控除を足した103万円までは所得税がかからない。これを「壁」としている。
昨年の衆議院選挙で国民民主党は、課税最低ラインを「178万円」にすると公約で掲げた。基礎控除を48万円から123万円に大幅拡大するというもの。基礎控除123万円に給与所得控除55万円を足すと178万円、給与の課税最低ラインの引き上げだ。
衆院選挙で議席を増やした国民民主党は公約実現を試みたが、与党は基礎控除の大幅拡大は多額の財源が必要ということで国民民主党案を退けた。その結果、12月末にまとめられた25年度税制改正大綱では以下のようになった。
◆基礎控除の拡大(所得税のみ):48万円→58万円
◆給与所得控除の最低額の拡大(所得税・住民税):55万円→65万円(給与年収190万円未満の人)
これにより給与収入における所得税の課税最低ラインは、103万円から123万円(58万円+65万円)となった。
「基礎控除の特例創設」とは?
所得制限&期間限定アリで複雑!
国民民主党はこの程度の減税は不満とし、年明けも引き続き与野党協議が行われた。結果、3月4日に「基礎控除の特例創設」という与党の修正案が衆議院で可決。基礎控除48万円が58万円になることはそのままで、年収の低い人には基礎控除が加算されることになった(ここ複雑ポイント!)。
修正案の「基礎控除の特例創設」について、給与所得者を例に見てみよう。年末に決まった基礎控除58万円(現行の48万円+10万円)に加算される控除額は次の通りだ。
(1)給与収入200万円以下:+37万円
(2)給与収入200万円超475万円以下:+30万円
(3)給与収入475万円超665万円以下:+10万円
(4)給与収入665万円超850万円以下:+5万円
(5)給与収入850万円超:上乗せなし
収入が高くなるほど、基礎控除の加算額は減り、年収850万円を超えると加算はない。つまり、与党の修正案は所得制限のある減税措置というわけだ。
(1)の37万円の上乗せは恒久的措置。しかし、(2)~(4)の上乗せは、25年・26年の2年間だけの減税措置だという。しかも、基礎控除の拡大は所得税のみで、住民税は地方自治体首長の反対により、減税は行われない。複雑な割に「しょぼい」と言わざるを得ない修正減税案だ。
折しも25日、夏の参院選に向けた国民民主党の経済対策案が判明した。所得税の「年収の壁」を178万円に引き上げ、年収制限の撤廃を盛り込むという内容だ。
ここまでが減税案の仕組みと最新情報だ。
大変お待たせしました! ここからは、「今年の自分の減税額」の属性別・年収別の試算をご紹介しよう。