この言葉を聞いて、「もう、この人には相談しなくていいんだな」と思ったんですよね。それまでは「何も分からないから、一応聞いておこう」と思っていましたが、その瞬間に「全部自分で決めていいんだ」と腹をくくりました。
もともと私は、役員を長く経験してから社長になったわけではなく、1年ほど役員を務めただけでした。ですから、経営に関する細かいことは本当に分からなかったんです。でも、「自分で全部決めろ」と言われたことで、逆にやるべきことが明確になりました。
この判断が正しかったのかどうかは、他の人がどう思うか次第ですが、少なくとも私はこのやり方でやってきて、今のところ問題なくやれていると思っています。
何も教えてくれなかった
会長の「想い」とは

今振り返ると、普通の会社なら「何でも相談しろ」と言われるのが一般的ですよね。「勝手なことをするな」「社長と会長が一緒になって会社を守るんだ」といった関係が普通だと思います。でも、当社の場合は逆でした。「全部自分で決めろ」と言われたわけですから。
他の企業を見ても、ここまで任せてもらえるケースはなかなかないように思います。普通なら、会長からもっと細かく指導が入るでしょうし、経営者としての方向性についても「こうしろ」と言われることが多いと思います。私の場合はそういったものが一切なく、完全に自由にやらせてもらえました。
大塚会長が私の性格をどこまで理解していて、「教えない」というスタンスを取ったのかはわかりません。でも、実際に「何も教えてくれない」という状況になったので、自分で学ぶしかなかったんです。「資本コストとは何か」「貸借対照表や損益計算書の見方」「ワークの考え方」など、基礎からすべて自分で学びました。
もし最初から「これが正解だ」と教えられていたら、おそらく私は自分で考えることをしなかったかもしれません。そう考えると、結果的に「すべて自分で判断する」というスタイルが自分に合っていたのかもしれません。