その言葉を聞いたとき、「確かにそうかもしれない」と思いました。転職した先で、またゼロから競争をすることになる。今の環境ではライバルがいない分、自分が輝いているのかもしれない。でも、新しい会社に行けば、自分より優秀な人がたくさんいて、自分が輝けないかもしれない――。そう考えたら、「もう少しここで頑張ってみるのも悪くないな」と思ったんです。

 それで、「すみません、やっぱり残ります」と伝えました。周りからすれば、「辞めるって言ってたのに、いきなり残ることにしたの?」という感じだったかもしれませんが、私の性格上、そういう決断はあっさりとできてしまうんですよね。もし転職していたら、今どうなっていたか。でも、そればかりはタイムマシンがないので、分かりませんよね。

どこにいても
結局は自分次第

 ただ、会社というのは誰か一人がいなかったからといって止まるものではありません。もちろん、社長として牽引していく役割は重要ですが、私がいなかったとしても、別の誰かがこの会社を引っ張っていたでしょう。

 とはいえ、今振り返ると「この会社に残ってよかった」と思っています。それを言うと、「そりゃ社長になったからでしょ?」と言われることもあります。でも、もし転職していたとしても、その会社で社長になっていたかもしれません。そう考えると、「どこにいても、結局は自分次第だったのかもしれない」と思うこともあります。

 当時、転職で内定をもらっていた会社は3社ありました。どこも業界を代表するような大企業ですよ。もしそちらに行っていたら、また違った道が開けていたのかもしれません。

 でも、最終的には私はこの会社に残りました。それが正解だったのかどうかは分かりませんが、少なくとも今、この会社で社長をやっているという事実がある以上、「この選択は間違っていなかった」と思っています。