「僕にいちいち聞かんといて」
気付かされたリーダーの役割
――川端社長が1994年にアース製薬に入社したのは、大学の就職部でファイルの企業をあいうえお順に見ていって、最初のほうにあった同社のファイルが目につき、面接を受けたからだったという。まさに「ひらめき就活」だったわけだが、それは運命の出会いでもあった。いくつかの支店で働き、大阪支店支店長、取締役ガーデニング戦略本部本部長、そして14年に社長就任と、スピード昇進を続けた。しかし、社長という重責はこれまでの役職とは比べ物にならないほど重い。迷いも多かったことだろう。社長就任後の10年間で求心力をどう高めたのか。また、経営判断で苦労したことはなかったのか。
正直に言うと、あまり求心力というものを意識したことはありませんし、経営判断で苦労した記憶もありません。 そもそも当社はオーナー企業なので、いわゆるカリスマ的な経営スタイルが根付いている部分もあります。
大塚製薬もそうですが、オーナー企業特有の文化があるんですよね。他の企業のことは分かりませんが、そういった背景がある中で、私が同じようなカリスマ性を持って経営することはできないし、そもそもそうする必要もないと思っています。
ただ社長に就任した当初は、さすがに何も分からなかったので、最初のうちは大塚会長にいろいろ聞いていました。
すると、あるとき、大塚会長に「まず、社長って書いてみて」と言われました。言われた通り「社長」と書くと、「社の長だね。会社で一番偉いのはあなた。だから、僕にいちいち聞かんといて」と言われました。