「お前の周りにライバルがいない」
転職を思いとどまらせた上司の一言
――川端社長は、新入社員時代に大阪支店で阪神・淡路大震災を経験、廃墟の中で支店や取引先の陣中見舞いを根気よく続けた。町の薬局を一軒一軒訪問して回り、取引先と深い信頼関係を築くコミュニケーション力の基礎は、このとき培われたと言っていい。担当エリアにおける自社製品のシェアを順調に拡大させ、若くしてトップ営業マンへと躍り出た。そんな川端社長だが、実は30歳のころ、一度転職しようと思ったことがあるという。その理由は何か。また、なぜ転職を思いとどまったのか。

当時、転職のことはあまり表には出していませんでしたが、本気で考えていました。直属の上司だった課長がいて、その人が非常に厳しい方でした。私は大阪にいたのですが、その課長はすでに関東へ転勤していました。でも、「転職するなら、一応この人には伝えないといけないな」と思い、電話をかけたんです。
それまで、転職することに対して特に止められることもなく、周りの人たちにも「まあ、仕方ないよな」という雰囲気で受け入れられていました。だから、課長も「そうか、頑張れよ」と言うんだろうと思っていました。
案の定、課長は「お前が転職してもどこでもやれると思うよ」と、あっさり認めたんです。最初は「すんなり受け入れられたな」と思いましたが、その後に「でもな、お前の周りには今、ライバルがいないだろ?」と言われました。
つまり、「この会社では、お前はある程度のポジションにいるかもしれない。でも、転職したら、同じような実力の人間がたくさんいる。そこでも戦えるのか?」ということを言われたんですね。