アメリカの私立大学は予算があるので入試専門の部署があり、入試専門官がいて彼らが入試業務をしている。しかし、日本の場合はそこまで人手がないので、教授たちが入試業務を担当する。そうなると何百人もの受験生の面接などできない。「総合型選抜はひとりひとりの受験生をきめ細かく見て合否を決める理想的な入試」と煽る論調もあるが、そんな入試方法で何百人もの学生を選抜するのは不可能だろう。
指定校推薦が増えていく納得の理由
その点、指定校推薦は選抜を実質、高校が行う。
私立中高一貫校の跡見学園は偏差値43で清泉女学院は偏差値45(共に四谷大塚偏差値・2月1日分)と以前に比べて入試の難易度がやさしくなっている。それでも、今でも慶應義塾大学などの難関大学から指定校推薦がくる。
その理由は、跡見や清泉が何十年間、毎年、優秀な学生を指定校推薦で送り出しているからだ。その学生たちは入学後も地道に努力をし、良い成績をとり、きちんと就職をしていく。それならば、大学は喜んで指定校推薦を出し続ける。反対に、指定校推薦で入学してきた学生たちに問題があれば、大学はその高校へ指定校推薦の枠を出さなくなる。この大学と高校の信頼関係の上に指定校推薦はある。
ある高校の進路指導の教師はいう。
「難関大学の指定校推薦をとらせるために、評定平均値を高めにつけていたんです。それを何年かやっていたら、その大学からは指定校推薦が来なくなりました」
入学後の語学の成績などを見ていれば学力が分かるからだ。「この高校は評定平均値を高めにつけている。何年も続いているから意図的だ」と大学側は把握したら、その大学と高校の信頼感は失う。
ゆえに指定校推薦の枠を維持しようとしたら、高校は厳格に評定平均値をつけて、しっかりと校内選考し、優秀な学生を大学に送り込む。
高校は生徒を確実に大学に進学させられるし、大学は選抜の作業の負担が軽減できる。指定校推薦は高校にとっても、大学にとってもメリットがある入試方法なのだ。そのため、文部科学省が推薦入試の拡大を推奨する中で、増えていくのは指定校推薦なのだ。