ところがここにきて指定校推薦でも模試での偏差値が必要になるケースが増えている。
たとえば、評定平均値4.3と 4.5の生徒がいる。評定平均値だけなら後者が優位になるが、模試偏差値が前者は安定して高い数値をとっているからという理由で、前者が選ばれる場合もある。
取材先で人気大学の教授がこう話した。
「一般選抜、指定校推薦、総合型選抜。すべての入試で同じ学力の生徒が入ってくるのが目標。そうなるように調整をしています」
これは多くの大学の方針といえるだろう。
10年ほど前にある私立大学の教授がこう愚痴っていた。
「AO入試の子は偏差値が10ぐらい低い。それだと授業やテストについてこれないから非常に困る」
入試によって学生の学力に差があると、授業が成り立たなくなる。学力が真ん中ぐらいの学生に合わせて授業をするとしよう。その場合、学力に差があると、学力が足りない学生は授業についていけず単位を落とす可能性が出てくる。
ある大学で行われた受験生向けの公開授業を取材したが、中にはまったく講義の内容を理解できない高校生もいた。そういう学生を入学させると本人が困ることになるから、大学はきちんと選抜をする責任がある。
そういった事情を分かっているから、文部科学省も「学力把握措置」という方針を通知し、推薦入試でも学力をちゃんと把握すべしといっている。東洋大学の「学力テストのみ」の学校推薦型選抜は、ルール違反だと注意されたが、一方で、文部科学省は、小論文や面接、書類審査などを組み合わせた学力重視の推薦入試は認めるともいっている。ようは、文部科学省は学力をちゃんと評価する推薦入試を推奨しているわけで、指定校推薦も今後はより学力を重視するようになっていくだろう。
「真面目にやって評定平均値を高めれば指定校推薦で大学に進学できる」という時代も終わりつつあるのかもしれない。