非難関高校でも慶應や上智の指定校推薦が余ることも
ところがだ、今、指定校推薦は岐路に立たされている。
大昔から難関高校では慶應や早稲田、上智といったそうそうたる名門私立大学の指定校推薦が余ることはよくあった。そういった高校で評定平均値が高い学生は国立や医学部、理系学部を狙うので私立文系の指定校推薦を望まないからだ。
ところが最近では、難関校と中堅校の間にある偏差値60ぐらいの高校でもそういった難関私立大学の指定校推薦の枠が余るのだ。
今、高校生は大学を就職の良さや偏差値ではなく、「自分がやりたいことができるか」を選ぶ。たとえば、心理学はとても人気がある。心理学を学んでも民間企業への就職で有利にはならないが、学生から見ると心理学は興味を持てる分野だからだ。
就職活動は売り手市場だから就職には困らない。また、今は転職を繰り返してキャリアアップしていくので、学歴や最初の就職にこだわる必要もないのだ。花形の外資系企業も新卒採用は東大や早慶が大半を占めるが、中途採用になると中堅大学卒の優秀な人材が入ってくるという。
そんな時流なので、いくら指定校推薦でブランド大学に進学できるといわれても、自分が望まない学部学科なら進学をしないのだ。
ある高校の進路指導の教諭はため息をつく。
「慶應の文学部の指定校推薦が埋まらなくて、評定平均値が高い私立文系志望の生徒に声をかけたんですが、『オールイングリッシュの学部に行きたい』『経済学を学びたい』といって断ってくるんですよ。慶應の法学部の政治学科志望の生徒に『文学部の社会学科でも政治学に近いことが学べるよ』と薦めましたが、納得しませんでした。結局、文学部の指定校が余ってしまったんです」
また、指定校推薦で校内選抜されるには高い評定平均値だけではなく、人格的にも優れていることが必要だ。入学後に模範的な学生として行動してくれるだろう人材でないと指定校推薦で大学に進学させられない。
そうなると最難関大学の指定校推薦の枠も埋まらないケースも生じてくる。これが高校側の悩みになってきている。