評定平均値5.0でも「学力の保障にならない」

 そして、大学側からしても、指定校推薦は悩ましい要素が出てきた。ところが新学習指導要領の施行によって、高校での成績をつける観点は、「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」となった。

 この最後の「学びに向かう力、人間性等」の評価はどうしても教師の主観が影響してしまうだろう。それもあって、今、評定平均値が「信頼できない語り手」になっているのだ。

 ある難関大学の入試担当者はいう。

「うちの指定校推薦には評定平均値5.0の高校生が出願してきますが、オール5であっても基礎学力の証明にはならなくなってきています」

 ある大学は文部科学省の推薦入試の拡大の方針に従って、指定校推薦を増やしたところ、学力が足りない学生が大量に入ってきた。

「偏差値50台前半の高校でも評定4.6あれば十分に学力があると思ったんですが、実際にはそうではない。英語の単位を落とす生徒も多く手を焼いている」と関係者は話す。

 そのため、その大学は指定校推薦の枠を減らし、一般選抜の割合を増やしている。

「評定平均値で学力が測ることができない」ようになると、一般選抜のペーパー試験で学力を測った方が学力の高い学生がとれると考えて当然だ。

 このように、評定平均値が信用できないものになってきたので、「評定4.3以上」という評定平均値を出願の要件にしただけでは、学力が担保されなくなってきた。そのため、指定校推薦の出願要件でも、英検(英語資格試験)で「2級以上」「準1級以上」と指定してくる大学も出てきた。

評定平均値だけでなく、模試偏差値が優先される場合も

 この大学側の学力確保の求めに応じて、高校側も校内選考で評定平均値だけで決めなくなってきた。同じ評定平均値4.3の生徒が二人希望してきて、片方が英検2級でもう一人が英検準1級の場合、後者が優先される場合もある。

 最近、増えてきているのは模試偏差値も評価の対象にするというものだ。従来、指定校推薦は「評定平均値は高いが模試偏差値が高くない」という生徒が希望する傾向があった。一般選抜では合格できそうもないから、評定平均値の高さを武器にして大学に進学しようというルートだった。