地域に根差した経営が、人と社会を幸せにする
昨年(令和6年/2024年)8月、武蔵コーポレーションの管理する建物が倒木によって被害を受けた。しかし、適切な復旧工事で事なきを得て、建物(アパート)のオーナーから、武蔵コーポレーションは感謝の手紙を受け取った。大谷さんは、そのことを報告したブログ(*3)に、「入居者様、オーナー様の安心・安全を第一に考えた管理業務を提供して、『住まいで人を笑顔に』を実現してまいります」と記している。
アパート・マンションのオーナーや入居者は、管理会社のスピーディな対応を望んでいる。結果、突発的なトラブルはプロパティマネジメント(不動産のメンテナンス業務など)を担う者の“ハードワーク”を生んでいくが……。
*3 武蔵コーポレーション社長 大谷義武オフィシャルブログ(2025年3月13日「倒木への対応」)参照
大谷 当社は、アパート・マンションの入居者への対応を、2年ほど前から強化しました。それまでは、たとえば、雨漏りで電話がかかってきたときは、「工事担当者に連絡して、お部屋にすぐに向かわせます」といったものでした。しかし、業者さんの到着が遅れたりして、「何やってるんだよ!」と、2次的なクレームが発生することもあって、トラブルの電話を受けたら、私たち武蔵コーポレーションの社員が現地にいち早く向かうことにしました。業者さんと一緒に、もしくは、社員だけでも先に。24時間、いつでも、です。普通に考えれば、そうした業務はきつくて、会社を辞めがちですよね。しかし、辞めてしまう社員はほとんどいません。夜中に「雨漏りしている」という電話がかかってくれば、社員が駆けつける――すると、住んでいる人は、たいてい、「来てくれて、ありがとう!」とおっしゃいます。対応した社員は、「いいことをしたなぁ」と思うことができて、仕事への「誇り」が生まれる。昨年12月31日の夜に、あるアパートで火災がありました。大晦日です。世間はお正月休みですが、当社の社員がすぐに現地に行き、入居している方たちをケアしました。そして、「わざわざ来てくれてありがとう」と言われて、心が満たされたそうです。
車のトランクに、水や簡易トイレ、電球などを積み、深夜に車で1時間以上も運転して、トラブルの発生した住宅に行くこともあります。結果、入居者さんは生活が戻って笑顔に。オーナーさんは家賃収入を得られて笑顔に。駆けつけた社員も仕事の誇りで笑顔に――私たち武蔵コーポレーションの企業理念(*4)の「住まいで人を笑顔に」となります。たしかに社員の身体的な負担はあります。しかし、一般的に言えば、ハードなことが嫌なのではなく、“ハードな仕事の目的がわからないこと”が嫌なのです。もちろん、ハードさの程度は重要で、「今日はAさん、明日はBさん」という輪番制を敷いて、私たちは、365日24時間の緊急対応を可能にしています。
*4 武蔵コーポレーションの企業理念=[経営理念]三方よし [MISSION]住まいで人を笑顔に [VALUE]チームプレーに徹しよう チャレンジしよう 会社を楽しもう
コロナ禍では、リモートワークが普及するなど、地方で働ける環境が整ったことで東京からの人口転出が見られたが、現在は、東京への転入超過数がコロナ前の水準に戻っている(*5)。朝の「上り線」の通勤ラッシュで明らかなように、企業の東京一極集中は止まる気配がない。そんななか、大谷さんは、地域に根差し、地元に密着した事業を行うことの大切さを実感している。
*5 総務省「住民基本台帳人口移動報告」参照
大谷 私たち武蔵コーポレーションは、埼玉県が誇れるような企業にはまだなり得ていませんが、さいたま市がいろいろなかたちで応援してくださり、昨年(2024年)もいくつかの賞をいただきました。市内の学校の授業に私たちが加わったり、少年サッカーの大会を開催したり、氷川神社の清掃も、奨学金制度も、地域に貢献したいという思いで続けています。地元の方々との濃いつながりは東京ではなかなかできません。地域で一目置かれる存在になれば、一緒に働く仲間も、お客さまも、良い人たちが集まってきます。また、取引コストが必要以上にかからないことも地元に密着している利点です。施工会社さんや銀行さんといった取引先が顔なじみなので、お互いの腹を探るような交渉もなく、精神的に楽なのです。社員も、地元の人が多くなって、コミュニケーションが強まっているようです。