研究結果というのはそもそもグラデーションの中にあり、個人にピタリと当てはまるようなものではない、ということは覚えておいて下さい。

 このような論文の読み方を身につけておけば、無駄に喜んだり、むやみにがっかりしたりすることはなくなるはずです。

 大きな群で見ると統計学的に有意差はある。しかし、そこには非常に多くの重なりがある。それが研究の本質です。全体としてそのような傾向があることと、個人に当てはまることは必ずしも一致しない、むしろそうでないことも少なからずある、としっかりと理解しておきましょう。

「男の子の早生まれ」は
なおさら成長がゆっくり?

 早生まれと同じか、それ以上に統計として存在するのが、男女の成長差の違いです(注2)。

 この研究も「統計学的に有意差はあるが、非常に多くの重なりがあり、個人に当てはまるものではない」ということを念頭に置いて確認していきましょう。

 これは子育ての実感として感じている方が多いと思いますが、女児の方が成長が早いというのは、統計的にいえば脳についてはそのような報告があります。

 下のグラフは、「大脳皮質」とも呼ばれる、ニューロンが集まった「灰白質」という「脳を覆う皮」の成長を、脳の前頭葉灰白質、頭頂葉灰白質、側頭葉灰白質、後頭葉灰白質の4つの体積で表したグラフです。

 上の線が男子の脳発達、下の線が女子の脳発達です。(a)(b)(c)のそれぞれのグラフに矢印があるのがわかります。そこが脳の成長のピークです。いずれも、女子の脳の方が矢印が手前に来ていることがわかります。つまり、女児の方がおおよそ1歳程度早く、脳の成長のピークを迎えているのです。

 昔から「一姫二太郎」といわれるのは、女の子の方が成長が早く、育てやすいからかもしれません。

図表:男女の脳のピークの差同書より転載
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注2 Nitin Gogtay, et al. Mapping gray matter development: implica-tions for typical development and vulnerability to psychopathology. Brain and Cognition, 2010 Feb;72(1):6-15.