誰よりも若いうちに
脳が刺激を受けるメリット

 このように研究だけを見ていくと、こんなふうに思われるかもしれません。

「男の子の早生まれの子は、すでに1年遅れているだけでなく、女の子から1年脳の成長が遅れているとすると、遅生まれの女の子に2年も遅れているということ?」

 ただこれは裏を返せば、誰よりも脳が若いうちに、刺激を受けることができるということです。

 保育園や幼稚園など集団の中に、誰よりも脳が若いうちに入る。誰よりも脳が若いうちに、勉強を始めることになる、ということです。これは実は脳科学的に見れば大きなメリットです。

 それは、脳には「可塑(かそ)性」という性質があるからです(編集部注/脳は思い通りに脳自体をつくることができる。この性質は若い脳の方が高いとされる)。

幼少期に褒めるだけで
早生まれの不利は9割解決

 ここからは早生まれの人、「早生まれ族(注3)」が持つ可能性について考えていきます。

 どのようにしたら、その能力を伸ばすことができるのか。「早生まれ族の中の賢人」は、いかにしてその能力を伸ばしてきたのか。一緒に考えていきましょう。

 自分のことを大切だと思える「自己肯定感」や、頑張ることで自分は何かを達成できると考える「自己効力感」の高さは、学力向上の大きな要因です。いくつもの研究で示されているこの結果は、「人間の能力は、自己肯定感(以下、自己効力感も含む)によって左右される」ということを示しています。

 早生まれの子に、高い自己肯定感を持たせることができれば、早生まれの子が持つアドバンテージを発揮できるようになるはずです。

 私は、年子がそのいい例だと考えています。

 年子はある意味、生まれの月のギャップに関しては、遅生まれと早生まれの状況とほぼ同じです。

年子の下の子が
優秀になりやすい理由

 年子の下の子は、たいてい兄や姉と一緒に育ちます。ある年子の方は、「双子みたいに育って、年が違うという感覚がなかった。何でも一緒にやっていた」といいます。

 姉と年子だというある男性は、幼い頃から姉と競うように勉強をしてきたそうです。姉が習っている単元を一緒に勉強するので、勉強は常に先取り。姉が小学校に入学し、教科書を読んでいたときにはうらやましくて、一緒に読んでいたそうです。そんな形で自然と勉強をしていたその男性は、現役で東京大学に合格しています。

注3 2月1日生まれの作家・綿矢りさの命名による。