まさかのナスダック上場!積極攻勢の結果は?

いきなり!ステーキ「初代社長」と「2代目社長」の明らかな違い、ステーキじゃない「まさかの新業態」とは?創業者の一瀬邦夫氏の写真がデカデカと掲げられた「いきなり!ステーキ」の店舗 Photo:JIJI(画像の一部を加工しています)

 開店直後は行列ができるほどの注目を集め、邦夫氏自身も「いきなり!ステーキが世界の主流になる」と高らかに宣言していた。

 こうした国際戦略の延長線上で、2018年にはペッパーフードサービスが日本の外食企業として初めて米ナスダック市場への上場を果たすに至る。

 これは単なる財務上のイベントではなく、「外食企業が世界基準の評価を受けることができる」という信念の証明として、創業者自身が最大限に誇りをもって受け止めていた。

 事業成長のスピードと熱量を決定づけたのは、まさに創業者による理念主導のアプローチに他ならなかった。

 2019年以降、「いきなり!ステーキ」は急激な既存店売上減に見舞われた。同年10月には前年同月比で41.4%減という深刻な数字が報じられ、業界内外に衝撃が走った。邦夫氏が主導した急速出店と店舗密集戦略により、自社店舗同士が客を奪い合う構図が生まれた。

 さらに、価格帯の上昇、立ち食い形式への抵抗、ステーキに対する飽きといった要素が重なり、来店数は大幅に減少した。

 いきなりの業績悪化によって、先述の「いきなり社長システム」や謝罪ポスターは、経営の混乱と理念の空回りを象徴する施策として記憶されることとなる。ポスターには「36名の社長が誕生」と掲げられていたが、根本的な経営課題の解決には至らなかった。

 2020年時点で、こうした方針に対する反発は社内外で強まっていた。

 ネット上では「いきなり地獄」「訳あり店舗=倒産寸前店舗」との声も広がり、創業者のブランディング力が逆にネガティブ要因として作用する場面が増えていた。拡張戦略の失敗に対する反省や撤回は表明されず、従業員や顧客の共感を得るどころか、ブランド毀損を深める結果となった。

 この閉塞状況において、実務面の立て直しを担ったのが2代目社長・一瀬健作氏である。