2代目社長・健作氏が進める「新業態」とは?

健作氏は2024年10月、テレビ東京のインタビューで「出店数を求めるのか、満足のいくサービスと商品を提供するのか。そこにギャップがあった」と語り、過去の経営を反省的に振り返った(テレ東BIZ、2024年9月)。
さらに「何を持って経営を重要視していくのか、(父と)意見をぶつけ合った。他の人が言えないことを、代表して言わなければいけないと言う思いがあった」と述べ、親子の立場を越えて、経営刷新する覚悟をにじませた。
改革の第一歩は、店舗網の大幅整理である。ピーク時500超の店舗数を、2025年3月時点で175店舗にまで削減。不採算店の閉鎖を断行し、「満足のいく商品とサービスをきちんと提供するための足元の見直し」(同上)を強調した。
結果として、2024年12月期には、いきなり!ステーキ単体で営業利益12億8900万円を計上し、前期比47.5%増という大幅改善を達成した。
健作氏の方針は、構造改革とブランド再定義の融合にある。価格と品質のバランスを再設計し、オーダーカットや高原価部位の排除、セルフレジの導入によって収益体質を再構築した。
さらに、客単価2500~3000円に設定した「1人すき焼き専門店」など、新業態を慎重に1店舗から開始。「時代のニーズに合わせて展開していく」と明言し、出店数至上主義とは一線を画した。
かつて創業者が「文化をつくる」と訴えた理念は、2代目によって「継続可能な仕組み」へと変換が模索されている。しかし、本当の挑戦はこれからだ。いきなり!ステーキの店頭にはまだ創業者の写った大きなポスターが掲げられており、創業者による経営への影響をうかがわせる。
2代目社長の健作氏が今、掲げるべきは、このような創業者のポスターではなく、未来のブランド構想である。理念の熱量を、構造の安定へと昇華させる変革こそ、企業再建の本質である。