ドナルド・トランプPhoto:Andrew Harnik/gettyimages

アメリカのトランプ大統領は、4月から輸入自動車に25%の追加関税を課す文書に署名。これまで日本からアメリカへ輸出する乗用車の関税は2.5%だったが、10倍になった。すでに3月から鉄鋼もアルミも25%関税が課されているが、この「25%」は、トランプ大統領にとってどんな意味を持っているのか?※本稿は、羽生田慶介『ビジネスと地政学・経済安全保障』(日経BP)の一部を抜粋・編集したものです。

禁輸に匹敵するほどの
関税25%の破壊力

 米中摩擦の中で一方が他方に高関税を課す措置において、「25%」という数字を目にすることが多いだろう。2018年7月に米国から中国に対して発動された第1弾の追加関税、続く8月の第2弾、9月の第3弾と、中国から米国への輸入およそ2500億ドル(合計)に対して、すべて「25%」の関税が課せられた。報復措置として中国から米国に課せられた関税も同じく「25%」だった。

 なぜ「25%」なのか。この関税率は、企業がサプライチェーンを見直さざるをえないほどのコスト増につながる、まさに「禁輸」の一歩手前ともいえる強力な措置だからだ。

 例えば輸入自動車の調達価格は、CIF価格(卸売価格に、輸送運賃・保険料などを含めた価格)で、国内売価の80%程度となるケースも少なくない。この80%に対して、さらに25%の関税が課せられた場合、ちょうど国内売価と同額の調達コストになってしまう。この場合、関税分のコストを顧客に価格転嫁できなければ、企業の粗利が丸ごと消し飛ぶことになるのだ。

 私が過去に出版した書籍(『すぐ実践!利益がぐんぐん伸びる稼げるFTA大全』)では、表紙で「関税3%は法人税30%に相当」というコピーを掲げたほど、関税がビジネスにもたらすインパクトは大きい。