もともとあった建物の特徴を
生かすアイデア

 森岡氏と刀は、ハウステンボス、イマーシブ・フォート東京、西武ゆうえんちといったエンターテインメント施設のプロデュースのほか、製粉大手ニップンとのコラボ、オンライン診療「イーメディカル」の運営など行ってきた。そして、今年7月に満を持してオープン予定の「ジャングリア沖縄」の計画・準備を手掛けている。

 数々のヒットを飛ばす森岡氏と刀の大きな武器となっているのが「数学マーケティング」による需要予測。森岡氏が独自に構築した手法であり、できるだけ少ないインプットから、例えばハウステンボスの入場者数を1日当たり9割を超える精度で予測する。

 また、森岡氏はどんな案件であっても、できる限り「ゼロから作り上げる」ことを避けていると見られる。先に挙げたイマーシブ・フォート東京は、東京・お台場に元々あったショッピングモール「ヴィーナスフォート」の建物を「居抜き」で活用している。

 ただ居抜きで使うだけでなく、もともとあった施設や建物の特徴を、それがデメリットであっても生かす方向でアイデアを出す。

 刀は、経営破綻したリゾート施設、グリーンピア三木(現・ネスタリゾート神戸)を1年で再建したのだが、破綻時に体験型施設が少なく「山しかない」と指摘されていたのを、「山がある」とポジティブに捉え直した。そして山の傾斜をうまく利用した体験施設を設置し、人気を集めたのだ。

 GWに皆がこぞって出かける人気スポットは、マーケターたちの斬新な「発想の転換」がもとになって生み出された。そんな視点でテーマパークを見つめ直してみてはどうだろうか。

30年以上続く
JR東海の広告キャンペーン

 4月28日と、4月30日~5月2日に休みをとれば、11連休も可能な今年のGW。海外旅行を計画している人もいるだろう。その一方で、間の平日を休まず、円安や物価高の影響を避けて国内旅行にしようとする人も少なくないはずだ。

 国内なら、どこがいいだろう? そう考えた瞬間に、頭の中に「My Favorite Things」のメロディーが流れた人の旅先は決まっている――「京都」だ。

 ピンとこない人に向けて説明すると、「My Favorite Things」はミュージカル映画「サウンド・オブ・ミュージック」の劇中歌だが、この曲を30年以上も一貫してBGMに採用したテレビCMが、JR東海の「そうだ 京都、行こう。」なのである。

『「そうだ 京都、行こう。」が長く続くわけ』(交通新聞社新書)は、「そうだ 京都、行こう。」のキャンペーンの変遷を追いつつ、時代を越えて受け入れられる理由を考察している。

 著者は、いわゆる鉄オタ(鉄道マニア)の中でも「交通広告見る鉄」を自称する関西大学の水野由多加名誉教授だ。