7年ほど新潟支社に勤め、もっと会社全体を見渡す経営の仕事がしたいと、東京本社の経営企画部に異動願いを出したところ、東京転勤が決まった。社員2万人を超える企業の経営目線に、日々驚くばかりだった。
異動してまもなく結婚し、夫の転勤に同行して2年半の育児休業をとった。しかしキャリアが停滞することなく管理職に登用された。
一方、「もう限界だ」と飛び出した新潟のメーカーでは、20年ほど経ったいまも女性管理職はひとりもいない。山田さんが20代のころに覚えた違和感をいまもひきずる組織風土であることがうかがえる。
いま山田さんは、東京本社で部下12人を率い、テレワークも取り入れたダイバーシティマネジメント(編集部注:人材の多様性を重視し、その能力を最大限発揮できるよう組織を改革するマネジメントすること)で力を発揮する。新潟のメーカーからすると、貴重な人材を流出させてしまったといえる。
Uターン組を受け入れる企業が、女性にも「やりがいのある仕事」を用意しているかどうか。ジェンダーバイアス(編集部注:男女の役割について固定的な観念を持つこと)を排して、見直す必要があるだろう。
地域社会に根深く残る
「女は女らしく」が息苦しい
地方で暮らすのは「息苦しい」という女性がいる。その大きな要因は、地域社会、職場、家庭で、固定的な「女性役割」「妻役割」「母役割」を求められることだ。
「結婚して子どもを産まなきゃ、一人前ではない」「『女性らしさ』を生かして仕事をしてほしい」「外で働いてもいいけど、家事・育児は女性の仕事だから」といった発言を生む意識の根底には、「男性は外で仕事、女性は家庭を守る」という固定的な性別役割分業意識がある。
こうした分業意識はとりわけ地域社会に根深く、そうした息苦しさから逃れるように、故郷を出て大都市圏で就職する女性もいる。秋田出身の山西沙也加さん(26歳、仮名)も、そんなひとりだ。
東京・大手町の高層オフィス街にあるレストランで、山西さんと会った。流行の紺のダブルのジャケットに、メリハリの利いたメイクがよく似合う。いまは営業部門で、営業管理や新人の教育にあたっているという。