地方で就職活動をしようとしたところ「女子は事務職」「専門職採用はしない」と言われたという声はいまなお挙がる。いったんは、故郷の地元企業に就職したものの、大きな男女差に疑問を感じて転職した例もある。
新潟の企業をあとにした、ある女性を紹介しよう。
「理系卒なのにお茶出し」
地方女子が転職を決めた瞬間
「適材適所で、お茶出しは女子にしてもらいます」
山田友理奈さん(40代、仮名)は入社間もない新人研修で、講師を務める先輩社員が発した言葉に、心のうちで「え?」とつぶやいた。
北陸地方の大学で理工系学部を卒業し、故郷新潟のメーカーに総合職として就職したときのことだ。
新人研修の一部は男女に分かれて、女子は総務部の女性社員から「お茶出し」の方法を指導される。一方の男子は同じ時間帯に技術系の専門研修を受けており、その研修を受けることを条件に、女子にはない「手当」が出されるというのだ。
技術開発部門に配属された山田さんは、男女同じ仕事を任せてもらったが、プロジェクトリーダーは全員男性。社内を見渡すと、女性管理職はひとりもいない。
就活にあたっては、故郷の新潟に戻ることに迷いはなかった。実家を離れて1人暮らしをした大学時代は、生活費も学費も親から仕送りをしてもらった。故郷に戻ることで、恩返しをしたいという気持ちもあった。
ところが、「この会社で働いても、できる仕事に限界がある」と感じ、20代半ばで大手通信会社の新潟支社への転職を決める。
そのとき、周りの女性社員は「えっ、(転職なんて)そんな選択肢があったの」と驚いたという。
大企業で育休後も管理職へ
“本当の働きやすさ”の正体
山田さんは、新しい職場に移って目を見開いた。前職では会議は先輩や上司の話を聞くのが当たり前だったが、「あなたはどう思うのか」と常に意見を求められる。
来客の折に、さっとお茶を出そうとすると「それはあなたの仕事ではない。お茶のマシーンがあるから」と止められた。