
政府は、全国の都道府県に設置している中小企業支援機関「よろず支援拠点」の役割や評価指標を抜本的に見直す。中小企業の生産性を向上させ、労働者の賃上げ実現につなげるため、「付加価値額重視」の運営に転換する。改革が求められている「よろず支援拠点」とは何か。地域金融機関が取引する中小企業にどのような支援をしてきたのか。その実態に迫る。(共同通信編集委員 橋本卓典)
専門家1000人在籍
よろず支援拠点は2014年、全都道府県に設立され、東日本大震災と当時の円高進行の影響が懸念された中小企業・小規模事業者の経営支援を目的とした。
中小企業庁およびよろず支援拠点全国本部が本部となり、よろず支援拠点の制度設計、全体管理、各拠点をサポートする。各地の経済産業局が各拠点の事務局となる「実施機関」を毎年公募・選定する仕組みだ。
実施機関の多くは、都道府県の公益財団法人が務めている。
実施機関は、経済産業局が公募・指名した「CCO(チーフコーディネーター)」と契約し、中小企業診断士や社会保険労務士、ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格保有者を中心とする専門家を「CO(コーディネーター)」として配置する。24年4月時点でCCO、CO合わせて、約1070人がよろず支援拠点に在籍する。
CCOとCOに支払われる報酬はもちろん税金だ。
相談件数は年間40万件超
よろず支援拠点は設立以降、相談対応件数を伸ばしてきた。新型コロナウイルス禍の20年度以降は、毎年度40万件以上の相談対応件数(延べ件数)が続いている。
国が調べた23年度の相談内容を見てみると、「売上拡大」がトップの74.1%、次いで「経営改善・事業再生」12.7%、「創業」11.1%だった。事業者(名寄せ後)の従業員数は「5人以下」がトップの57.3%、「創業前」19.5%、「20人以内」13.5%だった。
業種(名寄せ後)は「サービス業」がトップで34.4%、「製造業」15.1%、「宿泊業・飲食業」12.3%が上位を占めた。
よろず支援拠点は、主に小規模事業者の売り上げを拡大する支援を中心に展開されてきたことがうかがえる。大震災やコロナ禍において、中小企業・小規模事業者の相談相手として一定の役割を果たしてきたのは間違いない。