東京電力ホールディングスの柏崎刈羽原子力発電所 Photo:PIXTA
東京電力ホールディングス(HD)の柏崎刈羽原子力発電所の再稼働が、現実のものとなってきた。早ければ年明け早々に、東日本大震災以後の再稼働原発がゼロだった東電HDの「悲願」が達成される。他の電源と比べて原発が生み出す電力は安いとされるが、競合の新電力はそれほど東電HDを脅威に感じていないようだ。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、新電力幹部や東電HDのOBらへの取材を基に理由を解説する。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
フリーCFが7期連続マイナス
厳しい財務にわずかなプラス要素
東京電力ホールディングス(HD)の新潟県・柏崎刈羽原子力発電所がようやく再稼働へこぎ着けそうな情勢となった。
2025年11月21日、新潟県の花角英世知事は再稼働を容認し、「信を問う」として県議会(12月議会は12月2日~22日)に自らの信任、不信任を仰ぐとした。もっとも、県議会は自民党会派が過半数を占めるため、不信任となる可能性は極めて低い。東電HDとしては、地元の同意がようやく得られそうな状況だ。
11年に福島第1原発事故を起こした東電HD(当時は東電)にとって、事故後に再稼働を果たす原発はこれが初めてとなる。西日本では関西電力、九州電力、中国電力、四国電力の原発がすでに再稼働する一方、東日本は東北電力の1基のみで、原発再稼働の「東西格差」が生まれていた。柏崎刈羽原発が再稼働すれば、この格差が少し是正されることとなる。これを弾みに、長期的に見れば「東高西低」の電気料金の是正にも向かいそうだ。
一部県民を対象にしたアンケートで再稼働の賛否は二分されていたため、反対派には忸怩(じくじ)たるシナリオだろう。だが、厳しい財務の東電HDには福音となる。東電HDのフリーキャッシュフロー(CF)は25年3月期まで7期連続のマイナスだ。損益計算書(PL)を見ても、新たに見込まれる今後の福島第1原発の廃炉費用などとして、26年3月期第1四半期に特別損失約9000億円を計上した結果、第2四半期決算では純損失7123億円となっている。連結中間決算としては、過去最大の赤字である。
これまで東電HDは「原発1基が再稼働すれば電力の仕入れコストが減少し、年間約1000億円の収支改善効果がある」と説明していた。毎期の売上高が7兆~8兆円規模の巨体・東電HDからすればわずかばかりではあるが、厳しい財務にプラス要素となる。
早ければ26年早々にも再稼働が見込まれる状況になった柏崎刈羽原発6号機の出力は135万キロットと、世界最大級の原発だ。生み出す“安い電力″は相当な量となるが、東京電力エナジーパートナー(東電EP、東電HDの電力小売り子会社)と競合する新電力は現状、意外なことにさほど脅威には感じていないようだ。
次ページでは新電力幹部や東電HDのOBらへの取材を基に、その理由を解説する。







