ミニチュアのビジネスパーソン写真はイメージです Photo:PIXTA

資金繰り支援から経営改善・事業再生のフェーズへ――。中小企業へ資金を提供していた地方銀行と信用金庫・信用組合は2024年、一つの転換点を迎えることになりそうだ。【2024年「事業再生」の隘路・後編】では、実際に事業再生を行うために必要な、数字と人を動かす秘訣(ひけつ)について考えていく。(共同通信編集委員 橋本卓典)

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業種別支援の着眼点

 損益改善支援では、有効な施策が打ち出されている。

 金融庁は2023年3月、金融機関向けに中小企業の損益改善支援のポイントをまとめた「業種別支援の着眼点」(建設・運送・小売・飲食・卸売業など)を公表した。11月には続編となる「製造・サービス・医療業」の試行版を示した。

 作成に関わった北門信用金庫の伊藤貢作企業支援室長はさまざまな中小企業で働き、信金に参画してからも、企業支援の経験が豊富という異色の経歴の持ち主だ。伊藤氏は全国で勉強会、講演会を重ね、「着眼点」の認知度は徐々に広がっている。

 事業者と金融機関の双方の立場から損益改善を考えることができる伊藤氏は、「『着眼点』は企業支援担当者が最低限、理解しておくべきレベルです」と語る。

 現場の実務者が書いたものが施策となったのは、金融行政史でも初めてだろう。それだけ、中小企業の損益改善という「現場の具体」が問われているのだ。「着眼点」の特徴は、それぞれの地域・顧客特性を踏まえて、カスタマイズを奨励しているところだ。

 ある信金トップは「金融庁は初めて地域金融の現場で役に立つ施策を出した」と語る。

 特に、多くの小規模事業者と取引する信金・信組は、同じ地域金融機関の現場担当者が書いた「着眼点」をいち早く吸収し、現場で活用し、企業支援人材の育成を急がねばならない。