日本年金機構Photo:Rodrigo Reyes Marin/AFLO

中小企業に対して、厳格な社会保険料の取り立てや差し押さえなどが、倒産の引き金を引いてしまうケースが、企業再生の現場で危惧されている。背景には何があるのだろうか。もう一つの「2024年問題」とも言われる事象の深層を前・後編に分けてレポートする。(共同通信編集委員 橋本卓典)

企業再建の現場で高まる危機感

 新型コロナウイルス感染症のまん延や資源価格高騰で苦境にある中小企業が、社会保険料(社保)の支払いに窮し、倒産の危機にひんしている。企業支援の実務者たちが危機感を募らせている「社保倒産」だ。

 社保倒産とは、日本年金機構の社会保険料(厚生年金保険料)の取り立て、差し押さえによって中小企業の倒産への引き金が引かれてしまうことを指している。

 19年間で90件以上の中小企業の経営再建に携わり、事業再生に詳しい鳥倉再生事務所の鳥倉大介代表は次のように語る。

「税金の場合は企業が赤字であれば、発生しない税目もあり、繰越欠損金もあるので何とかなります。しかし、社会保険料は損益に関係なく、外形標準課税のように企業にかかります。コロナ禍の企業を金融機関、関係機関が必死に支援しても、年金機構の差し押さえが引き金となって倒産してしまうのはやりきれません」

 つまり、中小企業にとっては、税金よりも社保の支払いの方がより深刻な問題となっているのだ。

 次ページでは、万が一の場合の対処方法とともに、背景を解説していこう。