世代の違いは避けるものではなく、向き合うもの
たとえば、こんなエピソードを思い出しました。
あるイベントで、若手の司会者がユーモアたっぷりの自己紹介をして、会場の空気を一気にやわらげた場面がありました。
「そんなカジュアルな自己紹介でいいのか」と、私は、そのとき一瞬慌てましたが、参加者との距離がぐっと縮まるのを感じました。私には思いつかない発想でしたが、それがむしろ、参加者の心に響いたようでした。
その様子をみて、「伝える力は、年齢や経験の差で決まるものではない」と感じました。むしろ、柔軟な発想や個性あるアプローチが、場の空気を動かす力になると思えた瞬間でした。このように若い世代から逆に教わることも多いものです。
しかし、世代間のすれ違いは日常の中で少なからず起こります。
以前、ある会社の若手社員が「プロジェクトの進行に不安があったけれど、相談できずに抱え込んでしまった」と打ち明けてくれたことがありました。話を聞いてみると、「相談したら『そんなこともわからないのか』と思われるのが怖かった」という本音が隠れていました。
このようなすれ違いを防ぐためには、若手側にも勇気ある言動が必要です。
「察してもらえるだろう」「わかってくれているはず」と黙っていては、気持ちは伝わりません。自分の状況を正直に自分の言葉で説明する力。これもまた、自己表現力のひとつだと考えています。
世代間コミュニケーションにおいて最も大切なのは、「違っていて当たり前」という認識をもつこと。そのうえで、共通の土台を築く努力を続けることではないでしょうか。
私が実感しているのは、「世代の違いは避けるものではなく、向き合うもの」だということです。違うからこそ、驚きがあり、学びがあり、時に誤解もありますが、それを一つ一つ丁寧にほどいていけば、微笑ましく思える日がくると考えます。