世代が異なる者の信頼関係――それを育てる第一歩は…
大学の授業で「情報発信力」をテーマに取り上げた際、学生たちにこう伝えました。
「私たちが発信したいと思う情報の背景には、必ず何らかの価値判断や感情がある」と。
そのうえで、次のような問いかけをしました。
「最近、人とシェアしたいと思った話題について話してください」
この問いに対し、学生たちは「自然環境」「動物保護」「最新テクノロジー」「人気ゲームソフト」「サイバー攻撃」「育児休暇」など、実に多様な話題を挙げました。
さらに、「なぜ、それを人に伝えたいと思ったのか」「どんな価値があると感じたのか」を尋ねると、全員が自分なりの視点や意見を明確にもち、それをしっかりと自分の言葉で伝えてくれました。学生たちが、社会の動きに敏感であり、自分の考えを発信する力をもっていることが実感できる時間でした。
企業の管理職世代からは、しばしば、「若手社員と共通の話題が見つからない」「どんな話をしたらよいのか分からない」といった声が聞かれます。しかし、目の前できちんと向き合い、彼らの興味や関心を知ろうとする姿勢があれば、社会課題をはじめとしたテーマでも、彼らは十分に意見交換ができる力をもっています。
「理解しようとする姿勢」こそが、世代間のギャップを埋め、信頼関係を育てる第一歩です。コミュニケーションは、お互いの心が通じ合う言葉を探すことから始まります。今は、むしろ若い世代の方が多くの情報に触れている分、そうした言葉をすでに身につけているように感じます。
世代の違いを解消するために、年長者は、自らの経験を引き出しながらも、若手の考え方や価値観を取り入れ、柔軟にアップデートする勇気をもつこと。一方で、若手は怖れずに、自分の視点や感じたことを素直に言葉にしてみること。お互いが少しずつ歩み寄ることで、世代間の距離は縮まり、もっと豊かで可能性に満ちた社会になるのでは、と私は思います。