必要なのは、相手の可能性を広げるためのアドバイス

 学生たちが、社会に出てからも新鮮な心を忘れずにいるために必要なのは、私たち上の世代が若い世代を温かく見守り、寄り添うことではないでしょうか。年齢や経験に差があるからこそ、一方通行ではない、双方向のコミュニケーションが求められるのだと感じます。

 私は普段、アナウンサーとして活動しながら、当社(メリディアンプロモーション)に所属するメンバーへの指導にもあたっています。そこでも常に意識しているのが「相手に合わせた言葉選び」です。

 私の会社には、現場経験を積んだプロ意識の高いメンバーが揃っています。

 たとえ、若手であっても、現場での経験は3年以上。自分の仕事に責任をもち、努力を日々重ねているプロフェッショナルです。だからこそ、私は彼女たちの努力や知識、視点をしっかり尊重しながらも、「もっとこうすれば、より高い評価につながるよ」というように、前向きな提案として伝えるよう心がけています。

 一方的に自分の経験に沿った伝え方をするのではなく、可能性を広げるためのアドバイスをすることが、相手の意欲を削がずに、さらに努力しようという気持ちを引き出すことに繫がるのではと思います。つまり、「相手が受け止めやすい状況」をつくることです。

 世代が違えば、当然ながら、価値観も、表現方法も異なります。だからこそ、「これが正解だ」と押し付けるのではなく、「Aという選択肢もあれば、Bという考え方もあるよ」と複数の視点を提示し、相手が自分の頭で考えられるように導くことが肝心だと思っています。

 放送やイベントの現場では、「正確さ」や「段取りの良さ」が最優先されることが多いのですが、一方で、「聞いている人に、言葉をどう届けるか」という原点を見失ってはならないと、常に自分にも言い聞かせています。話し方ひとつ取っても、人によって、テンポや抑揚、間の取り方に違いがあります。でも、そうした違いこそが、その人らしさであり、世代ごとの個性でもあります。