ペアローンを組む前に!
やっておきたい相続対策3選

 不動産購入をアシストしてくれるペアローンだが、相続時の注意点を説明してきた。ここからは、ペアローンの相続リスクを軽減するための具体的な対策として、遺言書の作成、生命保険の活用、夫婦連生団体信用生命保険(以下、夫婦連生団信)の検討という3つの相続対策を説明する。

 まず1つ目は「遺言書の作成」だ。相続発生時における遺産分割の紛争を未然に防ぐためには、生前に遺言書の作成を行っておきたい。ペアローンを利用して共有名義となっている不動産の相続においては特におすすめだ。夫婦双方が相続に備えて遺言書を作成し、残される配偶者への配慮を行っておこう。

 遺言書によって、配偶者に当該不動産を相続させる旨を明確に定めておくことで、住み慣れた住居を確保し、生活基盤の安定を図ることができる。他の相続人からの相続財産の請求に対する抑止力ともなり得る。

 遺言書作成時には、遺留分への配慮も忘れないでおこう。法定相続人の遺留分を考慮した内容にしておくことで、遺留分侵害額請求を防ぐことができる。専門家の助言を得ながら、遺留分を侵害しない範囲で、配偶者への配慮と他の相続人への配分を調整することが肝要である。

 2つ目は「生命保険の活用」だ。複数の相続人が予想される場合、共有名義の不動産を特定の相続人(通常は残された配偶者)が単独で相続する際には、「代償分割」という手法が用いられることがある。これは、当該不動産を取得する相続人が、他の相続人に対して、その相続分に相当する金銭を支払うことで相続財産の配分について調整を行うものである。

 代償分割を行うための資金準備として、生命保険の活用は極めて有効な手段となる。死亡時に支払われる死亡保険金を代償分割の資金に使えば、経済的な負担を軽減できる。また、相続税が発生した時には納税資金にも活用できる。

 3つ目は「夫婦連生団信の検討」だ。ペアローン特有のリスクとして、一方の死亡後も他方のローン残債が残る点を説明した。このリスクを軽減する有効な手段の一つが、夫婦連生団体信用生命保険(夫婦連生団信)への加入である。

 夫婦連生団信は、夫婦のいずれか一方が死亡・高度障害状態になった場合に、夫婦双方の住宅ローン残債の全額が免除される保険である。残された配偶者は通常のペアローンとは異なり、その後の住宅ローン返済という経済的負担から解放される。ローン残債がなくなることで、当該不動産の売却や投資物件化も検討しやすくなる。

 ただし、夫婦連生団信にもデメリットはある。通常の団信よりも金利が上乗せされるのが一般的だ。上乗せ幅はおおよそ0.1%~0.3%程度とされ、借入金額や期間によっては、総返済額が大きく増加する可能性がある。夫婦の一方が亡くなり、保険金で住宅ローンが完済された場合、残された配偶者のローン免除額が一時所得とみなされ、所得税が課税される点にも注意が必要だ。