ペアローンの意外な盲点!
贈与税が発生するケース

 ペアローンを契約する際には、意外な贈与税の課税リスクについても知っておきたい。贈与税は、個人から個人へ、対価を伴わない財産の譲渡があった場合に課税される税金である。ペアローンにおいては夫婦間であっても、経済的な利益が無償で一方から他方へ移転した場合、贈与税の課税対象となる可能性があることを認識しておく必要がある。

 例として、妻の収入が大幅に減少し、妻が負担すべき住宅ローンの返済が困難になった場合、夫が妻のローン返済を肩代わりしたり、夫の資金で妻のローン分を繰り上げ返済したりするケースは贈与税に注意が必要だ。このような行為は、実質的に夫から妻への経済的利益の無償譲渡とみなされる可能性が高い。

 妻が本来負担すべき債務を夫が代わりに負担することで、妻は本来支払うべき金額を免れるという利益を得るからである。この場合、肩代わりした金額や繰り上げ返済した金額に対し、贈与税が課税される可能性がある。住宅ローンの借り換え、離婚による住宅ローンの一本化を行う際も同様だ。

 金利条件の見直しや返済期間の変更、離婚などを理由に、夫婦のローンを一本化するケースは少なくない。この際、夫が自身の名義で多く借り入れ、その資金で妻のローン残債を一括返済した場合、妻は自身の債務を免れるという経済的利益を得る。これも、実質的には夫から妻への贈与と解釈される可能性が高い。ペアローン契約に変更が生じる際には、税理士に相談しながら進めてほしい。

 パワーカップルがペアローンを利用して住宅を購入する際には、返済期間の中で起こり得る相続や贈与のリスクにも知識を持った上で契約に臨まれることがおすすめだ。夫婦間の経済状況の変化や離婚といった将来的な事態を見据え、慎重に判断してほしい。

 現在住宅ローンは金利が上昇傾向にある。すでにペアローンを組んでおり、借り換えを検討しているカップルは、意図せずして高額な贈与税を招く可能性があることを知っておいてほしい。税理士と連携し、適切な対策を講じることでリスクを回避することがおすすめだ。住宅購入は長期的な視点での資金計画と、将来起こりうる様々な事態への備えが不可欠である。