最近は社会貢献系のアワードやビジネス・コンテストが増えている。その中で、日経新聞も「日経ソーシャルイニシアチブ大賞」を創設。先日、大賞が発表された。最近はソーシャル・ビジネス系のアワードやコンテストもずいぶんと増えてきた。僕も「夢アワード」のアソシエイト・プロデューサーの他に、各種アワード、コンテスト、オーディションの審査員、評議員などを5つくらい務めている。単発の審査員を含めればもっと数多い。それくらい、この種のアワードやコンテストが増えたということだろう。

 そういう状況の中で、 日本経済新聞のような影響力ある媒体が、社会貢献系のアワードを開始するというのもひとつの時代を象徴していると思う。まあ、社会貢献もますますメジャーになってきたというわけだ。というわけで今回は、このような状況の中で、アワードやコンテストというものの社会的な役割をあらためて考えてみたいのだが、そもそもアワードやコンテスト、あるいはオーディションとはいったい何かということをまずは伝えたい。こんな言葉がある。

オーディションにはコンセプトが要る

 これは、往年の人気オーディション番組「スター誕生」のプロデューサーでもあった、作詞家の故・阿久悠氏の言葉である。ここでいうコンセプトとは、「自分たちが生み出そうとしている新しい価値(『スター誕生』の場合は新しいスター)と何か?」――というコンセプトのことだと思う。

 阿久悠氏の自伝によれば、「スター誕生」という番組で、このコンセプトがハッキリとしたのは、桜田淳子との出会いによるという。オーディションに応募してきた彼女を見て初めて、阿久悠氏たちは自分たちが生み出そうとしているスターとは何か、新しい時代のスターとはどのようなものなのかがハッキリとわかったという。その後、ご存知のように、「スター誕生」からは山口百恵やピンクレディなど、時代を席巻するスターが数多く生み出されていく。

 つまり、オーディションというものには、これからの新しい時代の「才能」とは何かを社会に先駆けて見いだし、そのような才能・資質を持った人材を発掘し世の中に送り出す機能が求められる。それがオーディションの社会的役割であり、アワードやコンテストも同様である。

 ジャンルは関係ない。映画でも音楽でもビジネスでも、それまでの歴史と現在の状況と空気感、そして進むべき未来という、時間的パースペクティブの中で、自分たちの(社会に対する)メッセージを発信する。そして、その「未来」を担うのは、どのような才能、事例なのかを提示する。アワードやコンテスト、オーディションの役割はそこにある。逆に言えば、アワードやコンテストというのは、非常にポリティカルなものなのだ。

 その端的な例がノーベル平和賞だろう。これは、国際的な政治的圧力がどの方向に向いているか、国際世論をどこに向かわせようとしているかが背景となったアワードだ。だから、環境問題、というか温暖化ガス問題が世界的なイシューになればアル・ゴアやIPCC(気候変動に関する政府間パネル)といった環境活動家・団体が受賞する。アフリカが大きなイシューになると、アフリカの女性が受賞する。