コメの価格は政治と密接に関係している
令和のコメ騒動がここまで深刻化したのはなぜか。まず、農水省はコメ農家を守るため、コメ価格の下落を防ぐことに腐心してきた経緯がある。その代表例が減反だ。基本的に、コメの生産能力を抑えて価格の下落を防ぐ政策であり、1970年ごろから本格的に減反政策を導入した。
農水省の当初の目的は、食用のコメ余りへの対応だった。過剰生産を防ぐため、コメの作付面積を制限、あるいは減らすよう農家に求めた。要請に応じ、コメから飼料米や大豆などに転作した農家には補助金を出した。こうして、国はコメの価格が下落しないように取り組んできた。
世界全体では、GDP(国内総生産)の成長率に従ってコメの生産は増加している(ただしジャポニカ種やインディカ種といった品種は違う)。中国やインド、米国では、海外の需要取り込みも狙ってコメの生産は増加している。そうした状況とわが国のコメ政策は対照的だ。
09年ごろには当時の農水相、石破茂氏が農業の競争力向上のために減反政策の見直しを提案した。しかし、根強い反対に直面して改革は進まなかった。コメの価格維持は、政治と密接に関係している。
18年、当時の安倍晋三政権は、都道府県ごとの生産目標量を示すのをやめた。表向き、減反政策は廃止された。その一方で、政府は飼料用米や麦などへの転作補助金を積み増した。コメの生産を抑えて、価格を人為的に高くして農家の所得を補償する政策といえる。これは、減反政策の目的を引き継ぐ政策だろう。
政府はコメの価格を維持するために、コメの輸入も制限してきた。コメの輸入は年間約77万トンまでは関税がゼロだが、これを上回る輸入には、1キロ当たり341円の関税を課している。
こうした貿易管理政策も、国内のコメ価格の下落を防ぐ策として重視されてきた。だが、それがトランプ政権から批判されたことは記憶に新しい。