「随意契約」で本当にコメ価格は下がるのか
5月26日、小泉農水相は備蓄米の放出を競争入札から、随意契約に切り替えた。国による買い戻し条件もなくす。
随意契約とは、発注者である政府や地方自治体が、任意(随意)で決定した相手と契約することをいう。価格も政府が決定する。まずは30万トンを放出し、需要があれば無制限で備蓄米を放出する方針のようだ。
こうしたやり方は、政府がコメの価格決定に直接関与するということであり、小泉農水相は、「5キロ当たり2000円」を実現する方針だ。5月23日には国内EC大手・楽天グループの三木谷浩史会長兼社長が随意契約に参加する意向を示した。ネット上の既存システムを活用することで、より迅速に消費者にコメが届く可能性は高い。
小泉農水相のシナリオ通り、随意契約の効果が出ている間にコメの流通量が回復し、需給バランスが落ち着くのだろうか?
このシナリオには、疑問符が付く点が多い。まず、今後の生産量予測によってコメの価格は変動するはずだ。また、世界的に肥料の価格も変化する可能性がある。気象面では猛暑や豪雨の影響によって、コメの生産量が予想を下回ることも考えられる。
当面、高値で売りたいコメ業者と、価格安定を目指す農水省との駆け引きは続くとみられる。随意契約の備蓄米の在庫が減少したり、消費者の購入意欲が一段と高まったりすると、再度コメの価格が上昇するリスクもあるだろう。小泉農水相と市場参加者とのつばぜり合いは続くと予想される。
そして参院選の影響も無視できない。与党・自民党としては、農家票を無視することはできない。一方、コメの価格が高止まりすれば、消費者票の獲得が難しくなるだろう。各政党とも、難しい政策主張が必要になりそうだ。
政府が随意契約による備蓄米放出を行うことは、コメの価格高騰を抑えるために必要だろう。しかし、それがコメ価格の長期安定に十分な対策であるとは、どうも考えられない。日本人の食を守る立場である農水相には、苦し紛れの選挙対策ではなく、長い目で見たわが国の農業のあり方を真剣に考えてほしい。