「それはソーシャルメディアの普及が原因です。何かのコンテンツを見ると、関連するものが次々と表示されます。プロアナの投稿が現れ始めたのを目にすれば、わたしならますます過激で厳しいダイエットをするようになるでしょう」

K-POPを追いかけているうちに
食事制限の動画にどっぷり漬かる

 これもまた、テクノロジーが需要を満たすと同時に生み出してもいる例だ。テクノロジーのプラットフォームは子どもやティーンエージャーに多数のコンテンツを提供する。そして、K-POPやK-POPのアイドルに関心のある人は、食事制限に関する動画を無限に見せられることになる。

 人間の認識はまわりの環境によって形作られるが、脳が発達途上の若者には特に当てはまる概念だ。知覚狭小化と呼ばれる心理プロセスは2通りに機能する。

 まずは発達途上の人間が、何度も遭遇する刺激を知覚する能力を向上させるというもの。

 たとえば、その子どもの家族の言葉や人種についての知覚だ。

 だが、それはまた、経験のないもの、たとえば、家族が話さない言葉やめったに出会わない人種を子どもが知覚する能力を低下させることにもなる。

 子どもたちが夥しい数のシンスポの画像や情報に触れることをわたしは案じている。ソーシャルメディアのアルゴリズムによってそういうイメージが増幅されたら、標準体重についての若者の考えはゆがみ、がりがりに痩せるように努力することが唯一の合理的な方法だと思うのではないだろうか。

異性とのマッチングでも
ガリ痩せボディに高得点

 目標体重を設定しているのは、K-POPのマネジメント会社だけではない。恋愛関係にも目標となる体重が存在する。

 1000を超える数の、韓国の恋愛や結婚のマッチング会社は、女性の顧客に対して理想の体重の範囲を公然と示している。パートナー紹介サービスは韓国の中流階級の独身者に長く信頼されてきて、そうした広告は地下鉄の車両じゅうで見かける。

 最古参で最も評価の高い結婚相談所の〈ソヌ〉は、顧客の価値を3点の主なサブカテゴリーで数値化した配偶者インデックスを作成している。