頑張り屋さんほど
行動のハードルを上げがち

 すぐやる人は、物事をシンプルに考えています。シンプルに考えるとは、「小さな1歩目」にフォーカスするということです。たとえば、ダイエットなら、すぐやる人は1日1回のスクワットや腹筋から始めます。それが続くようになったら、新しいメニューを追加するかもしれませんが、最初のうちはとにかく無理はしません。行動しない状態にならないことを優先しています。

 一方、すぐやれない人は物事を複雑に考えます。ダイエットであれば、年間計画を立てるところから始めます。どのダイエット方法が自分に合っているか、もっと効率のいいやり方は何かと、情報をたくさん集めて検討することに時間を費やします。

 こういう人は、「頑張り屋さん」であることが多いです。頑張り屋さんだからこそ、情報をたくさん集めて、失敗しない方法を追い求めます。ハードルを高く設定して、最初から大きなことをしようとしがちです。

 ただ、情報をたくさん持っているがゆえに、「どれが一番正しくて、最短のやり方か?」と考え込んで、動き出すのに時間がかかってしまいます。そうしているうちに、すぐやる人は1日10回しかできなかったスクワットが、1日50回できるようになっている、ということが起こるのです。

「小さな1歩目」を
見つけるためにできること

 では、「小さな1歩目」を見つけるにはどうすればいいのでしょうか。答えは、頭の中を整理することです。

 頭の中だけで思考を整理するのは難しいものです。殴り書きでかまわないので、見える化してみましょう。手書きでもメモアプリでもいいですし、エクセルが好きならエクセルでも問題ありません。大事なのは、頭の中を「見える化」して整理することです。

 すぐやれない人は、頭の中だけで何もかも解決しようとしがちです。頭の中のごちゃごちゃを書き出して見える化すれば、整理がしやすくなり、やるべき行動が見えてくるので動きやすくなります。

 研修の場でもこの話をするのですが、「こんなに簡単なことでよかったんですね!」とみなさん驚くとともに、効果を実感しているようです。

 書き出すときには、「今の自分にとって何が一番重要か。その中で一番簡単な作業は何か」を考えるとよいでしょう。そして、簡単な作業が見つかったらすぐ手をつけましょう。ランニングを始めるなら「とりあえずウェアを着る」、お弁当をつくらなければならないのなら「冷凍庫の肉を取り出して解凍する」。それくらいの簡単なことで十分です。

 人はかかったお金や時間、労力をもったいないと感じるため、一度始めたことをやめて損することは避けたいと考えます。これを「サンクコスト効果」と呼びます。

 このサンクコスト効果を利用すると、ゴールに近づきやすくなります。小さなことでも動き始めれば、元を取りたくなるので行動は加速していくでしょう。